第4章 冠詞

ドイツ語の冠詞には、大きく分類して、定冠詞・不定冠詞・否定冠詞・所有冠詞・指示冠詞の 5つがあります。(所有冠詞・指示冠詞はそれぞれ所有形容詞(代名詞)・指示形容詞(代名詞) とも呼ばれます)

☆定冠詞 der

Empfinden diese Mädchen die(女4) Scham nicht?
◆羞恥心というものをこの娘たちは感じないのだろうか。
Der(男1) Blutsauger fühlt das(中4) Unglück jemands, er hat viel* Nasenbluten und wird ohnmächtig.
その吸血鬼はひとの不幸を感じ取ると鼻血を大量に噴いて倒れる。

* viel は複数2格以外でしばしば無変化(ただし、冠詞類が前にあると必ず変化する)

定冠詞は英語の the と同じ働きをする冠詞で、話し手・聞き手双方ともに既知の物事を指す 場合や、「〜というもの」のように物事の本質を示す場合などに名詞の前に置かれます。
また、数えられない名詞で、それ自体が形の無い抽象的なものについても用いられます。

格変化は次の通りです。
男性… 1格 der/2格 des/3格 dem/4格 den
女性… 1格 die/2格 der/3格 der/4格 die
中性… 1格 das/2格 des/3格 dem/4格 das
複数… 1格 die/2格 der/3格 den/4格 die

(*) 下側の例文では、Unglück に前置されている定冠詞が、「不幸」という名詞の抽象性 (数えられないものであり、また明確な内容のない様子)を示しています。
この das Unglück を、下で説明する不定冠詞を用いて ein Unglück とすると、 「不幸」という抽象的な意味を離れ、「(ある)不幸なこと」と具体的な意味に変わります。

☆不定冠詞 ein

Das ist eine(女1) Krankheit von der Liebe.
◆それは恋の病です。
Mit einem(男3) Niesen zerstört ein(中4) Haus die jüngere Schwester des Hexeleins.
◆その魔女っ娘の妹はくしゃみ1つで家をぶっ壊してしまう。
In früheren Zeiten lebte in einem(中3) Dorf ein(中1) Mädchen, das eine(女4) Hartkohle sich auflegte.
◆昔々ある村に頭に炭を載せた女の子が暮らしていました。

不定冠詞は名詞に対して「ある、1つの」という含みを持たせたい場合や、聞き手が対象となる物事に ついて見聞きしたことがない場合などに名詞の前に置かれます。
ドイツ語の不定冠詞は英語のように“数が1つであること”を前提として使われるので、 フランス語のような「いくらかの」という意味を含ませるための複数形は存在しません。
(「いくらかの」と言いたい場合は不定代名詞 einige を用います→11章「不定代名詞」参照)

格変化は次の通りです。
男性… 1格 ein/2格 eines/3格 einem/4格 einen
女性… 1格 eine/2格 einer/3格 einer/4格 eine
中性… 1格 ein/2格 eines/3格 einem/4格 ein

* 語尾は定冠詞の場合とほぼ同じですが、中性4格で ein となっている点に注意。

☆否定冠詞 kein

Im ZTF* bleibt es kein(男1) Zeichnenstil des Urbildes.
◆アニメ版では原作の画風がまったく残らない。
Sie hat mit einem Mann keine(複4) sexualen Kontakte noch gehabt.
◆彼女はいまだかつて男性との性的接触を持ったためしがない。

* Zeichentrickfilm の略で「つぇっ(と)てぇえふ」と読む。筆者が勝手に略しました(ぇ

否定冠詞はその名詞が「まったく存在しない」ことを示す場合に用いられる冠詞で、ちょうど 英語の「not a/no」に相当します。
単数で用いられると「1つも〜ない」という意味が強調されます。
また、sein と共に用いられて「もはや〜ではない」という意味にもなります。

格変化は次の通りです。
男性… 1格 kein/2格 keines/3格 keinem/4格 keinen
女性… 1格 keine/2格 keiner/3格 keiner/4格 keine
中性… 1格 kein/2格 keines/3格 keinem/4格 kein
複数… 1格 keine/2格 keiner/3格 keinen/4格 keine

* 男性・女性・中性は不定冠詞と同じ変化です。

☆所有冠詞

Sie lässt ihre(複4) Kleidungen für die Kämpfe machen von einer* ihrer(複2) besten Freundinnen.
◆彼女は親友のひとりにバトルコスチュームを作ってもらっている。
Ich möchte die Gesichter eurer(複2) Eltern sehen!
◆あなたたちの親の顔が見てみたいわ!

* この einer は不定冠詞ではなく、不定代名詞。(11章「不定代名詞」参照)

所有冠詞(所有代名詞/所有形容詞)は、それぞれの人称代名詞が所有するものの前に置かれ、 その人称代名詞で示された人間の所有物であることを示すための冠詞です。

格変化は次の通りです(mein「私の」、dein「君の」、sein「彼の」の場合)
男性… 1格 mein/2格 meines/3格 meinem/4格 meinen
女性… 1格 meine/2格 meiner/3格 meiner/4格 meine
中性… 1格 mein/2格 meines/3格 meinem/4格 mein
複数… 1格 meine/2格 meiner/3格 meinen/4格 meine

* 否定冠詞と同じ変化です。
 ihr「彼女の、それ(ら)の、彼らの」、Ihr「あなたの」も同じ語尾変化をします。

また、unser「私達の」と euer「君たちの」については以下のように、er の e が抜け落ちることがあります。
男性… 1格 unser/2格 uns(e)res/3格 uns(e)rem/4格 uns(e)ren
女性… 1格 uns(e)re/2格 uns(e)rer/3格 uns(e)rer/4格 uns(e)re
中性… 1格 unser/2格 uns(e)res/3格 uns(e)rem/4格 unser
複数… 1格 uns(e)re/2格 uns(e)rer/3格 uns(e)ren/4格 uns(e)re

この所有冠詞は人称代名詞(ich, duなど)が既に示されている文中でその人称代名詞の 所有物であることを示すために用いられ、通常名詞(例えば ein Mädchen「ある女の子」) の場合は冠詞の2格を用いて ein höschen eines Mädchens「ある女の子のパンツ」というふうに言います。

☆指示冠詞

Ich will nach diesem(男3) Krieg mich erholen.
この戦いが終わったら、私は休息を取るつもりだ。
Bis du an jenen(男4) Hügel ankommst, werden deine Tränen trocken sein.
あの丘につくころには君の涙も乾いてしまっているだろう。

指示冠詞(指示代名詞/指示形容詞)は、「この」「あの」のように近い・遠いに応じて 物事を指す場合に用いられる冠詞です。
主な指示冠詞としては、dieser(この)、jener(あの)、solch(そのような)などがあります。

格変化は次の通りです。
男性… 1格 dieser/2格 dieses/3格 diesem/4格 diesen
女性… 1格 diese/2格 dieser/3格 dieser/4格 diese
中性… 1格 dieses/2格 dieses/3格 diesem/4格 dieses
複数… 1格 diese/2格 dieser/3格 diesen/4格 diese

* 例によって定冠詞とほぼ同じ変化をしますが、中性1・4格の形に注意しましょう。

ぽいんと、だよ。

■3人称の所有冠詞 ihr は「彼女の」という意味にもなるし「彼らの」という意味にもなるから、 単純な文だとあるものを持っている人が1人の女のひとなのか、複数のひとなのかの区別がつかなくなる ことがあるよね。

そういうときは、所有冠詞の代わりとしても使える前置詞 von と、人称代名詞の3格を組み合わ せると、彼女のものなのか彼らのものなのかがはっきりするよ。

Das Haus von ihr(彼女の家)
Das Haus von ihnen(彼らの家)

■指示冠詞 dieser は「今回の」「今の/今起こった」という意味でも使われるよ。

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