第12章 枠構造と副文・dass文

枠構造はドイツ語の文法の中核となる規則で、これを理解すると大抵のドイツ語の文の構造が わかるという肝心かなめのものであると同時に、ドイツ語の最大の特徴でもあります。

次章「話法の助動詞」以降、19章「zu不定詞の使い方」まで、この「枠構造」という概念に 触れながら解説を進めていきますので、この章の内容を理解するまでは次章より先に進まれ ないことをおすすめします。

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2章で「定動詞第2位の法則」というものを説明しましたが、この2番目の語句要素として置かれた 定動詞が不定詞(活用させていない、もとのままの形の動詞)や過去分詞を伴う場合、または 定動詞自体が15章で解説する「分離動詞」であった場合などに、関連する語が文の末尾に置か れて、他のさまざまな語句要素を第2位の語順にある定動詞とサンドウィッチする形のことを、 枠構造と呼びます。

枠構造が作られたときの語順は、次のようになります。

[1番目の語句要素(主語など)] → [定動詞] → ...(さまざまな語句要素)... → [定動詞に関連する要素] .

仮に、[定動詞]を助動詞、[定動詞に関連する要素]を不定詞であると考えてみましょう。
英語では、例えば助動詞を用いてある文をつくるときに、その助動詞が従える不定詞は必ず can be, will do, may go...などのように、助動詞のすぐうしろに置かなければなりませんでしたね。
ドイツ語の文では、枠構造という規則があるために、不定詞を助動詞のすぐうしろに持って きたりするようなことはできず、この規則に従って、文の末尾に持ってくる必要があるのです。

では、不定詞が文の末尾にくるということは、そこで文が終わってしまうのだから、その不定詞 が従える目的語などの語句要素をこれ以上うしろに置けないではないか、と思うかもしれません。 むしろ、そう思ってもらえたほうが説明しやすいのですけどね。

上の語順に ...(さまざまな語句要素)... とあるように、この場合の不定詞が従える目的語や、 それに関係する前置詞句、人称代名詞、副詞…といったものは、第2位の位置に置かれた定動詞 (この場合は助動詞)と、末尾に置かれた「定動詞に関連する要素」(この場合は不定詞)との 間に挟まれます。
つまり、その不定詞が本来定動詞として使われたとき(枠構造がないとき)にうしろにずらずら と並ぶ目的語や人称代名詞、前置詞句などは、枠構造を形成する文中では前に移動してしまう というわけですね。

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この枠構造を作る動詞にはどんなものがあるのかというと、そのほとんどが「(話法の)助動詞」と 「分離動詞」です。実例を挙げれば、

■定動詞+不定詞の枠構造

[1番目の語句要素] [6つの話法の助動詞] ...(さまざま語句要素)... [不定詞] .
→13章参照

[1番目の語句要素] [未来の助動詞 werden] ...(さまざま語句要素)... [不定詞] .
→14章参照

[1番目の語句要素] [使役動詞 lassen] ...(さまざま語句要素)... [不定詞] .
→17章参照

■定動詞+過去分詞の枠構造

[1番目の語句要素] [完了の助動詞 haben/sein] ...(さまざま語句要素)... [過去分詞] .
→14章参照

[1番目の語句要素] [受動の助動詞 werden] ...(さまざま語句要素)... [過去分詞] .
→16章参照

■分離動詞の枠構造

[1番目の語句要素] [動詞部分] ...(さまざま語句要素)... [前綴り] .
→15章参照

以上のようなものがあります。
ほかにも、sehen ... [不定詞] で「〜するのを見る」、hören ... [不定詞] で「〜するのが聞こえる」、 gehen ... [不定詞] で「〜しに行く」などのような zu を伴わない不定詞をとるものも、 枠構造を形成する動詞に含まれます。

 
 

ここまで理解できたら、一旦枠構造から離れて、次は「主文」「副文」という概念に触れてみましょう。

主文と副文の違いは、簡単に説明すると

●主文 … 従属接続詞を伴わず、それ自体で言い表された内容が把握できる文
●副文 … 従属接続詞を伴い、それ自体では言い表された内容を把握できない文

となるのですが、いまいちピンとこないと思います。
ひとつ例文を挙げてみます。

Er ist sehr beschäftigt, weil er nach zwölf kleinen Schwestern seht.

「彼は12人の妹の世話をしているので、とても忙しい」という文です。
さて、主文はコンマより前、コンマより後のどちらでしょう。

いきなりわかってしまったひとも、悩んでしまったひとも、まずはコンマより前の文だけに 注目してみてください。

Er ist sehr beschäftigt

とありますが、「彼はとても忙しい」、これだけで十分意味が通りますよね。
したがって、こちらの方が主文になります。
er は人称代名詞、ist は動詞、sehr は副詞、beschäftigt は形容詞なので、 さきほど紹介した主文と副文の違いの中の「従属接続詞」らしきものも使われていません。

残った weil 以降が副文ということになります。
コンマ以降の文を形成している語句要素を一つずつ調べていくとわかると思いますが、 人称代名詞、前置詞、数詞、名詞、動詞…とある中で、辞書で引くと weil だけに「接続詞」 という注釈が書かれてあると思います。

実はこの weil こそ数ある「従属接続詞」の一つであって、これにさまざまな語句要素が導か れているので、コンマ以降の部分は必然的に副文ということになるのです。

いやちょっと待てよ、副文の中身も「彼は12人の妹の世話をしている」という訳になっているから、 別に意味が通っていないわけではないじゃないか、と思うでしょう。
副文にはもちろん従属接続詞も含められるので、「彼は12人の妹の世話をしているから」 という解釈で考えなければなりません。
すると、だからなんだってんだよ、ということになりますよね。
「彼が12人の妹の世話をしているから」どうしたんだよ、ということに。

このように副文は、それ自体では話が途中で途切れているような解釈になってしまうので、 それ自体では言い表される内容がすべて把握できないということになり、主文の内容に 繋がって始めて状況の把握が実現します。

要するに、とどのつまりは、主文とは年齢相応自立して生活できている人間のようなものであり、 副文とは成長してもまだ親の脛を齧っている穀潰しのようなものだということですね。

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改めて、さきほど示した「彼は12人の妹〜」という例文を睨んでみてください。
副文の語順がちょっと変だと思いませんか?
これに言われずとも気がついたひとはしたたか者、まだ頭の中に枠構造のことが残っているようですね。

副文の中では、枠構造に似たようなことが起こり、主文では第2位に置かれるはずの定動詞が 文の末尾に移動します。これを、一般に「定動詞後置」といいます。

さきほどの例文では、定動詞 seht が副文の末尾に置かれていますね。
これが従属接続詞 weil とともに他の語句要素をサンドウィッチしているさまが枠構造のように 見えるので、これを枠構造の一つとして考えることもあります。
(厳密に言えば、枠構造というのは第2位にある定動詞と、末尾にあるその関連要素による規則 なので、この副文中での「定動詞後置」は枠構造に含まれません)

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長くなってきましたが、これで最後です。
副文の一つとして数えられる、「dass文」について少し触れておきます。

dass文とは、従属接続詞の一つである dass で始まる副文のことで、目的語のような文、 主語のような文、ある名詞を説明する付加語のような文として機能します。
英語で言う「that節」に相当し、多くの場合「〜ということ」と訳されます。

Ich weiß (das), dass er zwölf kleine Schwestern hat.
(私は、彼に12人の妹がいるということを知っている)

Dass man zwölf kleine Schwestern hat, ist wunderbar.
(=Es ist wunderbar, dass man zwölf kleine Schwestern hat.)
(12人の妹がいるということは、素晴らしい)

Ich hatte einen Traum, dass mein Vetter zwölf kleine Schwestern hatte.
(私は、いとこに12人の妹がいるという(内容の)夢を見た)

12人の妹ばかり使って申し訳ないですが、上から順番に、目的語のような働き、主語のような 働き、付加語のような働きをdass文はしています。

上から1つめ、2つ目の文で das や es という語が、dass文の内容の代わりとして使われていま すが、このような使われ方をする das や es を「相関詞」と呼びます。

ぽいんと、だよ。

■ als とか wie を使った比較の対象とか、関係代名詞で始まる関係文、長い前置詞句は 例外的に枠構造の外(枠構造を閉じる関連要素よりもうしろ)に置かれることがあるよ。

■枠構造が起こるのは主文だけで、副文では定動詞が文のおしりに置かれるから、いちばん うしろが定動詞、その前が不定詞や過去分詞などの関連要素、それより前側にいろいろな 語句要素、という感じになるよ。

■副文が主文よりも前にくると、副文全体が「1番目の語句要素」と見なされるから、主文の 定動詞が1番目になる点に注意してね。

Weil er nach zwölf kleinen Schwestern seht, ist er sehr beschäftigt.

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