第13章 話法の助動詞

話法の助動詞とは、動詞の不定詞とともに用いられて「〜できる」「〜しなければならない」 といったように、話し手の主観的または客観的な判断を叙述される文章に加えるための 語のことをいいます。

話法の助動詞に数えられるものは、können, mögen, müssen, wollen, sollen, dürfen の6つです。

☆可能・推量を表す können

Sie kann von den Augen strahlen.
◆彼女は目からビームを出すことができる
Der Mann kann vom Handteller Feuerbälle werfen, indem er eine Blume pflückt.
◆その男は花を摘むことによって、手のひらから火の玉を飛ばすことができる
Sie kann über mich noch ärgerlich sein.
◆彼女、まだ俺のことで怒っているのかもしれないな
Obwohl ich betrunken dabei bemerkt nicht habe, kann ich in deinen Armen vielleicht geheult haben.
◆あのときは酔ってたからわかんなかったけれど、あんたに抱かれて大泣きしてたのかもね

können は英語の can にあたる助動詞で、能力的にある動作ができることや、 「〜かもしれない」という話し手の推量を示すための助動詞です。

動詞の活用形は、直説法現在の単数人称で語幹の könn が kann となり
ich/er/sie/es kann, du kannst

直説法過去で konn となり
ich/er/sie/es konnte, du konntest, ihr konntet, wir/sie/Sie konnten

接続法ではそれぞれI式が
ich/er/sie/es könne, du könnest, ihr könnet, wir/sie/Sie können

II式が
ich/er/sie/es könnte, du könntest, ihr könntet, wir/sie/Sie könnten

となります。

☆許可・推量・意志・要求を示す mögen

Gut. Wenn das Leben dir kein bisschen nötig ist, magst du deine Willensakte tun.
◆そうか。命が惜しくないというのならば、勝手にそなたの望むことをするがよい
Der Weibische*1 sagte: ,,Auch wir Männer*2 möchten uns schönmachen!''
◆その女みたいな男は「オトコだっておめかししたいのよ!」と言った。
Oje, möchtest du dich sofort in das gefallene Badetuch wickeln vor Ausreden?
◆あぁいや、言い訳なんていいからとりあえず落としたそのバスタオルを巻いてくれないかな

*1 形容詞 weibisch(女らしい)の名詞化にあたる Weibische の男性形。
*2 なにか定動詞が2位に来ていないように見えるが、auch は名詞の前か後について「〜もまた」という意味を作るから1つの語句要素のうちであり、wir と Männer は同格扱いなのでこの3語は1つの語句要素となる。

mögen は会話では単体で使われて「〜が好き」という意味になるほかは直説法で 使われることはまれで、ほとんど接続法II式の形で用いられます。

動詞の活用形は、直説法現在の単数人称で語幹の mög が mag となり
ich/er/sie/es mag, du magst

直説法過去で moch となり
ich/er/sie/es mochte, du mochtest, ihr mochtet, wir/sie/Sie mochten

接続法ではそれぞれI式が
ich/er/sie/es möge, du mögest, ihr möget, wir/sie/Sie mögen

II式が
ich/er/sie/es möchte, du möchtest, ihr möchtet, wir/sie/Sie möchten

となります。

☆必然性の主張・推量・衝動などを表す müssen

Wir müssen in einer Klasse wenigstens eine Schülerin mit Brille und Zöpfen haben.
◆我々はクラスに少なくとも一人はメガネでおさげな女子生徒を擁するべきである
Wir müssen den Zeitlauf vergessen, wenn wir jene Stromstadt besuchen.
◆その電気街に降り立つといつも我々は(思わず)時の経つのを忘れてしまう
Nanu, es muss hier herum keine solche Laden gegeben haben.
◆あれ、このあたりにはそのような店はなかったはずだが。

müssen は英語の must にあたる助動詞で、「〜するべきである」という必然性の主張を 示すほかに、「〜に違いない」という推量、「思わず〜してしまう」という衝動などを示す 際にも用いられます。

動詞の活用形は、直説法現在の単数人称で語幹のウムラウトが取れて muss となり
ich/er/sie/es muss, du musst

直説法過去で語幹が muss となり
ich/er/sie/es musste, du musstest, ihr musstet, wir/sie/Sie mussten

接続法ではそれぞれI式が
ich/er/sie/es müsse, du müssest, ihr müsset, wir/sie/Sie müssen

II式が
ich/er/sie/es müsste, du müsstest, ihr müsstet, wir/sie/Sie müssten

となります。

☆主語の意志・直前性などを表す wollen

Der Engel will mit seinen Diensten mich zufrieden nicht machen, er muss nur mich sondern stören.
◆その天使は俺を自分のご奉仕で満足させたいんじゃなくて、単に俺の邪魔をしているだけにちがいない。
Brudi* hat neuerdings seltsame Benehmen, ich will seine Spur heimlich verfolgen!
◆このごろおにいちゃんの様子がヘンだから、こっそり跡をつけてみようと思います!
Sein Tagebuch will wegen zuvieler Tadel brennen.
◆彼の日記は数え切れないほどの非難のコメントで今にも炎上しそうだ。

* もちろん Bruder の変化形。赤の他人に対しては所有冠詞つきの「Mein Bruder」を用い、家族では「Bruder」、特に親密な場合は「Brudi」を用いるのが望ましい。オタク用語の「まいしすたぁ」にあたるのは「Schwesti」であろう。

wollen は英語の will, want to などにあたる助動詞で、「〜したい」という主語の意志を 示したり、「今にも〜しそうだ」という直前性を表現する際にも用いられます。

このうち、否定文で wollen が直前性の意味で使われると、「今にも〜しそうだ」がまったく あべこべになって「なかなか〜しそうにない」という意味になります。

動詞の活用形は、直説法現在の単数人称で語幹の woll が will となり
ich/er/sie/es will, du willst

過去形・接続法の語幹はすべて woll のままで、過去/接続法II式基本形 wollte, 接続法I式基本形 wolle にそれぞれ
ich/er/sie/es -, du -st, ihr -t, wir/sie/Sie -n
の活用語尾がつきます。

☆主語以外の意志・要求を表す sollen

Du sollst eine andere Gelegenheit haben.
◆そなたにもういちどきかいをあたえよう
Wenn mein Wunsch jetzt gewährt wird, soll ein Paar des weißen Flügels an meinem Rucksack befestigt sein.
◆今私の願いごとが叶うならば、一組の白い翼をリュックサックにつけてほしい
Hausmädchen sollten mich herzlich begrüßen nicht beim Kaffee sondern beim Eingang meines Hauses.
◆喫茶店ではなくて自分の家の玄関でメイドさんに温かく迎えてもらいたいものである

先程の wollen が主語の意志を表す助動詞であったのに対し、sollen は主語以外の物や人の 意志を表すための助動詞です。そのため、私が何かをしたいからといって「Ich soll...」だとか、 君が何かをしたいからといって「Du sollst...」になるようなことはまずありません。

ではどういうふうに使われるのかというと、主語の意志ではなく、話し手の意志や要求と考えて もらえれば理解しやすくなると思います。
最初の例文の場合、「自分が与えよう」と言っているので、先程の wollen を用いて 「Ich will...」ということもできます。ただし、sollen の場合は例えば1人称の意志を 表す際に ich を使うことができないので、代わりに「機会を与える相手」である「そなた」 を主語とし、2人称の文章にします。そして、「私」の側から「与え」ようとしていたものを、 「そなた」が「持つ・受け取る」ように表現してやればいいのです。
つまり、話し手が「私」であることに変わりはないのだけど、そのシーンにおける中心人物が 「私」から「そなた」へと移されたものだと考えればよいでしょう。

2つ目の例文も厄介です。
対訳では「つけてほしい」となってしますが、この文において sollen の主語となっている ものはあくまで ein Paar des weißen Flügels であり、今回も話し手である「ich」は 引っ込んでいますね。
受動態の話をまだしていないので少し説明しにくいのですが、文の主語である「1組の白い翼」に 話し手である「私」が「リュックサックにつけられる」ことを要求している様子を叙述したのが この文です。

3つ目の例文では、普通 sollen となるところが sollten となっています。
これは「接続法II」という動詞の変化形で、口調を和らげた丁寧な要求などを表すことができ、 この場合は対訳の「〜もらいたいものである」という部分に接続法IIの影響が現れています。

動詞の活用形は、直説法現在の単数1,3人称で ich/er/sie/es soll となり、過去形・接続法の語幹はすべて soll のままで、過去/接続法II式基本形 sollte, 接続法I式基本形 solle にそれぞれ
ich/er/sie/es -, du -st, ihr -t, wir/sie/Sie -n
の活用語尾がつきます。

☆許可・禁止を表す dürfen

Da ich deine kleine Schwester bin, darf ich mich dir mal verwöhnen, oder?
◆妹なんだもん、ちょっとぐらいは甘えたって構わないよね
Du darfst den deckel des Sarges nicht öffnen.
◆その棺桶の蓋を開けてはならんぞ

dürfen は英語の may にあたる助動詞で、肯定文で許可を、否定文で禁止を表すほか、 推量の助動詞としても用いられます。

動詞の活用形は、直説法現在の単数人称で語幹の dürf が darf となり
ich/er/sie/es darf, du darfst

直説法過去で durf となり
ich/er/sie/es durfte, du durftest, ihr durftet, wir/sie/Sie durften

接続法ではそれぞれI式が
ich/er/sie/es dürfe, du dürfest, ihr dürfet, wir/sie/Sie dürfen

II式が
ich/er/sie/es dürfte, du dürftest, ihr dürftet, wir/sie/Sie dürften

となります。

ぽいんと、だよ。

■話法の助動詞は、これまで説明してきたみたいに動詞の不定詞と一緒に使われるほかにも、 直接目的語とか状態を示す形容詞なんかをとって、たとえば können の場合は「〜が できる」という意味になったり、mögen の場合は「〜が好きだ」という意味になったり するよ。

このとき、不定詞をとる場合は完了時称(→14章「直説法における過去時制と未来時制」参照) で過去分詞がもとの形とおんなじになるけど、直接目的語や状態を示す形容詞をとるときは ge〜t の 形になるから注意してね。

Das kleine Mädchen hat zum ersten Mal Einkauf machen können.
(その幼女は初めてお買い物をすることができた)

Das kleine Mädchen hat den ersten Einkaufen gekonnt.
(その幼女は初めてのお買い物ができた)

■話法の助動詞には、「彼は〜できる」「彼女は〜してもよい」みたいに自分の判断ではなくて、 相手の特徴や状態なんかをそのまま述べる“客観的な使いかた”と、「(自分が思うに)〜なの かもしれない」「(自分が思うに)〜にちがいない」みたいに、相手の状態を踏まえずに自分の 判断で述べる“主観的な使いかた”があるよ。

このときに、主観的な使いかたをするときは話法の助動詞が従える不定詞として haben/sein + 過去分詞 の形の「完了不定詞」も使うことができるけど、客観的な使いかたのときは完了不定詞は 使えないから注意してね。

können .... [過去分詞] [haben/sein] 〜したかもしれない
müssen .... [過去分詞] [haben/sein] 〜したに違いない、きっと〜したのだろう

(→ können 4つめの例文、müssen 3つめの例文参照)

■このほかにも、「接続法II」っていう形を使っていろいろな慣用句のような言い回しを つくることができるよ。

man müsste .... [不定詞] (私は)〜し(てみ)たいものだ
hätte .... [不定詞] können (あのとき)〜することもできたのになあ
hätte .... [不定詞] mögen (あのとき)〜したかったのに
hätte .... [不定詞] sollen (あのとき)〜すべきだったのに
hätte .... [不定詞] dürfen (あのとき)〜してもよかったらなあ

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