第16章 受動態

Ich werde an mein Katzenohr gebissen, dann habe ich eine seltsame Stimmung.
◆ネコミミをかまれるとヘンな気持ちになるんです。

動詞 werden または sein を助動詞として用いることによって、「〜され(てい)る」という 受け身の構文を作ることができます。

このとき werden/sein は主文において枠構造を作りますが、枠構造を閉じる動詞、 すなわち助動詞と一緒に用いられる動詞は不定詞ではなく過去分詞の形で表現します。
(フランス語では受動態における過去分詞の文法上の性・数を主語のそれに一致させる必要がありますが、 ドイツ語の場合過去分詞の形は付加語的に用いられない限りはそのままで構いません)

したがって、構文は

werden/sein ... (von 人[3]/物[3]) ... 動詞の過去分詞

となります。
受動文の意味上の主語、つまり能動態の文に言い換えた時の主語は von + 3格 で表され ます。英語での by 〜 にあたる表現ですね。
ただし、意味上の主語(行為者)を限定しない場合や、そもそも特定できない場合などには この von + 3格 を言い表す必要はありません。 (後ほど行為者が特定できない場合に用いる不定代名詞 man の説明をします)。

ここで、werden と sein の2つが助動詞として使われるが、どうのように使い分けたら いいのか、という疑問がわいてきます。
英語では、行為者を示す前置詞として、by 以外にも (be known) to であったり、 (be associated) with であったり、(be surprised) at であったりといろいろと使われますが、 by 以外の前置詞、特に to や with は一瞬の動作における受け身ではなく、 ある受け身の動作が行なわれた後、その状態がずっと続いているということを示す場合が 多いということを覚えているでしょうか。

拙作「もえふつ」のほうを閲覧していただいてもお分かりの通り、受動態にはふつう、 一瞬の動作における受け身を示す「動作受動」という概念と、その動作が行なわれたあとに 一定の期間その受け身の状態が続くことを示す「状態受動」という概念があります。
これが、英語やフランス語の場合前置詞の違いによって区別され、ドイツ語ではこれを助動詞で 区別することにより「動作受動」が werden で、「状態受動」が sein で示されます。

後回しになりましたが、先程受動態の行為者が特定されない(誰なのかよくわからない)場合に、 「不定代名詞 man を用いた表現」があると書きました。

これはフランス語の on と同じようなもので、それ自体訳されることはありませんが、 ニュアンス的に「誰かある人」「誰かわからない人」の意味を持つ代名詞と考えてもらえば よいと思います。
この不定代名詞 man を受動文の主語として用いることによって、例えば

Man seht mich.

「誰かわからない人が私を見ている」というのをこういうふうに表現したとすると、 この man は和訳する際に「誰か」とか「誰かわからない人」などという勝手の悪い 言葉に置き換えられることはほとんどありませんから、受動的表現で「誰かわからない人」を行為者として 「私は(誰かわからない人に)見られている」→「私は見られている」となるわけです。

この不定代名詞 man は、受動文を作る際に主語になれない3格の人間や物(受動態の主語になれる のは、4格の名詞/代名詞だけです)を表す名詞が主語になっている日本語の文章を独訳する際にも 一役買ってくれます。
例えば「私は(宛名のない誰かから)手紙でお礼を言われた」と言いたい場合、「表明する」 (aus|sprechen)という動詞は人を3格に、お礼などの気持ちを4格にとるので、

Ich wurde mit einem Brief einen Dank4 ausgesprochen.

というのは誤りで、4格の「お礼」を主語(1格)にして

Ein Dank1 wurde mir3 mit einem Brief ausgesprochen.
(お礼が手紙で私に表明された)

として初めて文法的に正しいといえます。
ただ、これがぎこちない表現だと感じることもあるでしょうから、ここで不定代名詞 man を 召還して、

Man sprach mir3 mit einem Brief einen Dank4 aus.
((誰かが)私に手紙でお礼を表明した)

とすれば、自然と受動表現と解釈され、「私は(誰かから)手紙でお礼を言われた」となるのです。 つまり、本来お礼を表現したひとが誰なのかわかっている場合に置かれる、その人物を示す1格の 人称代名詞/名詞の代わりに man を置いてやればいいというわけですね。

もっと例文!
  • Das Mädchen, das ich gezeichnet habe, ist zum lieblichsten gewählt worden.
    俺の描いた女の子が最萌えキャラに選ばれますた
    (* 完了時制の受動文における werden の過去分詞は geworden ではなく worden)
  • Wir werden nach diesem und jenem gefragt, es ist das Mitleid der Welt, für euch darauf zu antworten.
    なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け。
  • Wenn er auch fragwürtig gesehen wird, geht er doch mit Plakate in seinem Rucksack, mit Brust heraus. Das ist ein ZTF-Narr.
    たとえ訝しげな目で見られようともなお胸を張り、リュックサックにポスターを差して歩く。これがアニヲタというものだ。
  • Zweideutige Wörter müssen mit Signaltönen verhüllet sein.
    きわどい単語は信号音で伏せられている必要があります。
  • Heute auch scheint sie glücklich, denn sie ist von lieben Büchern umgeben.
    大好きなご本に囲まれて彼女は今日も幸せそうである。
  • Wieder hatte man an den Sitz Reißnägel gelegt, wo sie sich setzt.
    また彼女の座る席に画鋲が置かれていた
ぽいんと、だよ。

■一瞬「〜された」時は werden 、受け身の状態がそのあとも続いている場合は助動詞に sein をとるんだよ。

■主語にある行為をしてきた相手は von + 3格 だね。

■受動文では完了時称で werden の過去分詞が geworden(「〜になる」の時の過去 分詞)じゃなくてworden になるから注意してね。

■不定代名詞 man を主語にすると「誰か特定できない人」を行為者にした 受動態の文が作れるよ。

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