第18章 関係代名詞構文

Wer die Mandarine vernachlässigt, (der) muss davon umgebracht werden.
◆みかんを粗末にするひとは、みかんにやられて死んでしまうべきです。

関係代名詞は、中高生時代に英文法でもかなり力を入れて説明された項目の一つだと思いますが、 ドイツ語の関係代名詞構文も奥が深いのでしっかりと理解してください。

まず関係代名詞とはどういうものであったかを思い出してみましょう。
例として、das Comicblatt(同人誌)という名詞を使ってみます。

まずはこれを使って、「私は同人誌を買う」という文を作ります。
んなもんは3章でとっくに習っているんだ、屁の河童さ――と思ったひとも、つべこべ言わずに とりあえず訳してみてください(ひどい

Ich kaufe das Comicblatt.

という文が頭の中で、または紙の上に浮かび上がったでしょうか。
das ではなく des とか dem と書いてしまったひとは失格です。
もう一度4章「冠詞」からやり直すか、うっかりミスの場合は今後冠詞類の格変化に気をつける ようにしてくださいね。

お次は、この das Comicblatt にある説明を加えて、意味を限定してみます。 bestimmen(指定する)という動詞の過去分詞 bestimmt を用いて、「私は言われた同人誌を買 う」という文を作ってみてください。

Ich kaufe das bestimmte Comicblatt.

こういう文ができればOKです。形容詞(この場合は過去分詞ですが)が付加語的に用いられる ときの語尾変化はややこしいので、まだ慣れていなくてミスってしまったひともいるかも しれません。それは後ほど5章「名詞と形容詞の語尾変化」で再確認していただくとして。

いよいよ、関係代名詞に足を突っ込んでみます。
関係代名詞というのは、この付加語的に用いられて名詞を修飾する形容詞のようなもので、 副文を形成することによって、その副文全体がそれと関係を持つ名詞(先行詞といいます) を付加語的に修飾するもの、と考えてもらえばよいかと思います。

Ich kaufe das Comicblatt, das er gestern mir bestimmt hat.

「私は、彼が昨日私に言った同人誌を買う」という文です。
この文では、コンマで区切られた部分より後ろが副文であり、この das から hat までの 副文全体が das Comicblatt を修飾するという仕組みになっています。
このとき、修飾する副文を「関係文」と呼び、修飾される語句(この場合は das Comicblatt) を「先行詞」と呼びます。
関係文の先頭には、必ず先行詞の文法上の性に合った関係代名詞が置かれます。

<関係代名詞>
男性… 1格 der/2格 dessen/3格 dem/4格 den
女性… 1格 die/2格 deren/3格 der/4格 die
中性… 1格 das/2格 dessen/3格 dem/4格 das
複数… 1格 die/2格 deren/3格 denen/4格 die

すべての性の2格と、複数3格が特殊な形になっているほかは、定冠詞と同じ変化になります。
格は、関係文の中で先行詞になった名詞がどういう働きで扱われているかによって変化します。 この場合は、「彼が昨日私に言った同人誌」となっていて、副文の中のできごとだけに注目する と「彼が私にその同人誌を指定した」ことになり、「同人誌」は bestimmen の直接目的語 として扱われていますから、関係代名詞の形も4格になります。
Comicblatt は中性名詞ですから、中性の4格、つまり das がこの場合関係文を導く関係代名詞 として選ばれているのです。

この中で2格の関係代名詞はちょっと変な使われ方をします。
というよりは、2格の名詞について、ある名詞の「所有者」として使われること以外の用法が今日では ほぼ廃れていることから本コーナーでは説明をしていないので、いまいち感覚が掴みにくいだけ だとは思いますが。

関係代名詞の2格は、日常語ではある名詞を付加語的に修飾し、「先行詞の所有物」を示します。
つまり、2格の関係代名詞が、関係文の中で所有冠詞のような役割を果たすわけです。
一つ例文を作ってみます。

In dieser Klasse gibt es einen Schüler, dessen jüngere Schwester in den Kindergarten geht.
(このクラスには妹が幼稚園に通っているヤツ[←この場合は男子生徒]がいる)

この文で、男性2格の関係代名詞 dessen が jüngere Schwester を修飾しているのが わかりますね。
このとき、2格の関係代名詞はそれ自体が修飾している jüngere Schwester の性に 一致するのではなく、先行詞である (einen) Schüler の性に一致します。
このように、2格の関係代名詞は例外的に副文中での働きによって格の変化を示すのではなく、 所有冠詞のような働きをして先行詞の所有物を付加語的に修飾します。

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後回しになりましたが、最初の例文のほうをもう一度見てください。 例文には wer, der と2種類の「関係代名詞っぽい」語が使われていますが、このうち 関係代名詞にあたるのは wer のほうだけで、この文における der は「指示代名詞」と 呼ばれます。

そもそも wer はどういったときに使われるのかというと、特定の先行詞が示されないとき、 つまり先行詞を特に決めずに「〜する人」と言いたい場合に使われます。同じ要領で、 「〜する物」を示すのは関係代名詞 was です。

<先行詞なしで用いられる関係代名詞 wer, was>
wer… 1格 wer/2格 wessen/3格 wem/4格 wen
was… 1格 was/4格 was

そして、関係文に wer, was が用いられたとき、漠然と言い表された「人」「物」を示す 先行詞になるのが指示代名詞 der(werの場合), das(wasの場合)です。
der, das は(wer, wasに導かれる関係文がコンマより前にあっても後ろにあっても)必ず主文の 頭に置かれ、それぞれ定冠詞の男性単数形、中性単数形とまったく同じ変化をします。
ただし、例文でもカッコをつけているように、指示代名詞が der/das(1格)になる場合は しばしば省略されます。
was の2格はほとんど用いられず、3格の用法はありません。

もっと例文!
  • Was zotig ist, (das) ist mir nicht zu erlauben!
    えっちなのはいけないと思います!
    (関係代名詞 was, 指示代名詞 das ともに1格)
  • Wer solchen sagt, den kann ich nicht leiden!
    そんなこと言うひと、嫌いです!
    (関係代名詞 wer は1格, 指示代名詞 den は4格)
  • Wem ich 30 000 Mark eilends überwiesen habe, (der) war nicht mein Sohn.
    私が大急ぎで口座に30000マルクを振り込んだ相手は、息子ではなかった。
    (関係代名詞 wem は3格, 指示代名詞 der は1格)
  • Ich begreife schmerzlich den Defekt der Festplatte, der ihn zerrissen hat.
    彼の心をずたずたに引き裂いたハードディスクの故障は、私にも痛いほどわかる。
    * 先行詞は (den) Defekt (der Festplatte)
  • Er geht mit einer Freundin um, deren Stimme wie die einer ZTF-Person ist.
    彼はアニメヴォイスを持った女性と付き合っている。
    (直訳だと「その声がアニメキャラのそれのようである女性」)
    * 先行詞は (einer) Freundin
  • Der Junge, dessen Haar zornig ist, erliegt auf dem Streit niemandem.
    髪の毛が怒っているその少年は、喧嘩では誰にも負けない。
    * 先行詞は (Der) Junge
  • Sie, der ich alle Entscheidungsrechte überlassen habe, schien sehr glücklich.
    俺に一切の決定権を譲られた彼女は、とても幸せそうだった。
    (直訳だと「俺が...譲った」となるが、このままではぎこちないので受動的な意味にしている)
    * このように、人称代名詞を先行詞としてとる例もあります。
  • Aller Anblick, den du gesehen hast, war nur eine Vision.
    君が見ていた景色のすべては幻想に過ぎないのだよ。
    * 先行詞は (Aller) Anblick
  • Solange Sie in diese Schule gehen, gibt sie Ihnen die Regeln, denen Sie nachkommen müssen.
    あなたがここの学園に通っている以上、あなたには遵守して頂かなければならない決まりごとというものがありましてよ。
    * 先行詞は (die) Regeln
    * 主文の sie は (diese) Schule の代用
ぽいんと、だよ。

■英語では関係詞節(ドイツ語でいう関係文)の最後に前置詞が放っておかれたままなのが カッコ悪いから、関係代名詞の前に置いて to whom とか in which とかいうふうにする 例があったよね。

ドイツ語にもこの規則はあって、同じように関係文の中に前置詞が取り残されてしまった場合は、 関係代名詞の前に移動するんだよ。

Er hat an den Felsen sich gesetzt. Dieser hat explodieren können.
(彼は岩に座ったが、その岩は爆発しかねないものだった)

この文の den Felsen を先行詞にした関係代名詞構文をつくりたいときに

Der Felsen, den er an sich gesetzt hat, hat explodieren können.

のように名詞を先行詞にすると、もともとその前にあった前置詞の an が関係文の中に 取り残されちゃうから、この an を関係代名詞 den の前までよいしょって運んできて

Der Felsen, an den er sich gesetzt hat, hat explodieren können.

とすれば問題は解決だね!

ここでおにいちゃんから問題っ。

Sie haben von dem Finger den silvernen Ring gezogen.
Wen berühren Sie mit jenem?
(あなたは指から銀のリングを外しましたが、その指で誰に触れるのですか?)

この文を、疑問副詞 Wen で始めて、der Finger(もちろん格変化もさせてね)を 先行詞にしたひとまとめの文を作ってください。
わかったひとはおにいちゃんにこっそりメールで!
(正解したひとはもえどくのトップページに名前が載るかも、って言ってたよ)

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■関係代名詞からはちょっと話が逸れるけど、この話はここまでの説明をきっちり理解 できたひとだけ聞いてね。

ドイツ語の文法には「冠飾句」っていうのがあって、これが関係代名詞の代わりに使われる ことがあるんだけど、英語とかフランス語にはないちょっとヘンで「ドイツ語らしい」文法だ から、覚えておいて損はないよ。

冠飾句っていうのは、現在分詞(不定詞に d をつけたもの)や過去分詞が付加語的に 名詞を修飾する形容詞として使われたときに、その現在分詞とか過去分詞にまつわる前置詞句 とか副詞、人称代名詞を、冠詞と名詞の間にずらーっと並べられるっていう決まりごと に従ってつくられることばなんだよ。

die mit Nacktschnecken obszön tanzende Kleine
(なめくじと一緒に妖しく踊る幼女)

この冠飾句では、定冠詞 die と名詞 Kleine の間に前置詞句 mit Nacktschnecken、副詞 obszön と 現在分詞 tanzende が押し込まれて長い名詞になっているよね。
そうだよ、これで一つの名詞(としての語句要素)なの。

これは、名詞である Kleine を関係代名詞構文の先行詞にしてしまって

die Kleine, die mit Nacktschnecken obszön tanzt

と表現しているのとまったく一緒で、新聞記事とかニュースの報道では関係文の中身を 冠詞と名詞でサンドウィッチしてしまう冠飾句っていうのが結構好まれているみたい。

もちろんいくらでも長くできるから、

das immer noch lächelnde und fleißig arbeitende aber wegen seiner schlechten Arten oft scheiternde ein bisschen arme Hausmädchen
(いつも相変わらず笑顔でせっせと働くがその手際の悪さゆえによく失敗するちょっぴり哀れなメイドさん)

なんていうのもアリだね。

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