第20章 再帰代名詞と再帰動詞

Sie hat sich4 körperlich nicht im geringsten entwickelt von Grundschule an.
◆彼女は小学校のときからちっとも身体的に成長していない。

再帰代名詞 sich とともに用いられ、自動詞的な意味になったり、受動の含みを持ったり、 相互的な意味になる他動詞のことを「再帰動詞」と呼び、英語では oneself とともに用いら れる動詞、フランス語では再帰代名詞 se とともに用いられる「代名動詞」にあたります。

まず最初に再帰代名詞とはなんぞやという話ですが、これは一見働きが人称代名詞と似ている ようで、少し違います。
人称代名詞は、ただ単に「私」「君」「あなた」「彼」…といった人称に、それがどういう 働きで使われるのかを示すための格変化が成されるだけで、例えば sie を用いて「彼女が 彼女の頬をぶつ」なんていう文章を作ったとしても、その二人の「彼女」は修羅場を迎えた 三角関係における女同士なのかもしれませんし、自責のために自分を殴っているのかもしれません。
つまり、3人称の代名詞が用いられたとき、反復使用された格の違う人称代名詞(主語を表す1格 と目的語を表す4格など)は同一人物とも、異なる人物とも解釈されます。

これを、異なる人物または物事ではなく、主語(1格の人称代名詞 or 通常名詞)と同一の人物 または物事ですよ、ということを指し示すために用いられるのが再帰代名詞です。
文中に1格で既に示されている主語との照らし合わせを図るものなので、当然のことながら この再帰代名詞に1格の形は存在しません。また、2格もありますがほとんど使われません。
通常、もっとも頻繁に見かけるのは4格の形で、たまに3格にお目にかかれる程度です。

<再帰代名詞の3格・4格>
ich - 3格 mir/4格 mich
du - 3格 dir/4格 dich
ihr - 3格・4格ともに euch
wir - 3格・4格ともに uns
er/sie/es/Sie 3格・4格ともに sich
(* 2人称丁寧形 Sie の場合も sich の頭文字 s は小文字です)

この再帰代名詞とともに使われる他動詞「再帰動詞」は、再帰代名詞を目的語にとることによって、 主にその動詞本来の他動詞的な意味が自動詞的なものに変わったり、主語が複数人称の場合に相互に 作用し合っている様子が表されたりします。

Trotz keines Windes hat die Tür sich4 geschlossen.
(風もないのにドアが閉まった)

この例文では、schließen(閉める)が再帰代名詞 sich の4格と一緒に使われる (厳密には再帰代名詞 sich の4格を目的語にとる)ことによって、主語の「ドア」が sich = 「それ自身」を「閉じる」という解釈が成され、「自分自身を閉める」→「閉まる」という 意味の転じ方をします。

ドアが主語では何かとわかりにくいと思うので、もうひとつ、人間を主語にした例文を 紹介します。

Die kleine drehte sich4 fröhlich einmal, indem sie auf Zehenspitzen sich4 stellte.
(その幼女は嬉しそうにつま先立ちで1回転した)

この例文では、drehen(回す)と stellen(立たせる)という二つの他動詞が 再帰代名詞 sich とともに使われることにより、それぞれ「(その幼女が)彼女自身(sich)を 回す」「(その幼女が)彼女自身(sich)を立たせる」という、再帰代名詞の意味をも含めた 本来の解釈から、それぞれ「回る」「立つ」という自動詞的な訳が導き出されます。

また、相互的な作用を示す sich の用いられ方としては、

In einem Zug nach dem Heiligtum drängen sich4 wenig hübsche Männer.
(聖地へと向かう列車の中で、あまりカッコ良くない男達が互いに押し合いへし合いしている)

このような例文を挙げてみます。
drängen を辞書で引くと「(無理矢理力任せに)押す」という意味が出てくると 思います。この「押す」というのは、主語となる人または物から、目的語となる人または物への 一方的な動作を示すものですが、主語が複数人称の場合に再帰代名詞 sich とともに用いると、 「お互いに押し合う」という相互的な動作が言い表されます。

上の例文は状況を示す前置詞句を強調したいがために本来は第1位の語句要素として扱われる はずの wenig hübsche Männer が思いっきり後ろへと飛ばされてしまっていますが、 この語句が主語になり、再帰代名詞 sich はこの語句と結び付いて、「あまりカッコ良くない男達」 が相互的作用の中心であるということを示します。

もっと例文!
  • Sie ärgern sich4, ihre Haare auch sträuben sich4.
    彼らは腹が立つと、髪の毛も逆立つ。
    * 人4 ärgern 〜を怒らせる/sich4 ärgern 怒る
    * 物4 sträuben 〜を逆立てる/sich4 sträuben 逆立つ
  • Sie hat sich4 mit der Art von ihnen ganz gefärbt.
    彼女はすっかり彼らの流儀に染まってしまった。
    * 人4/物4 (mit 物3) färben (物3で)〜を染める
      sich4 (mit 物3) färben (物3で)染まる、染められる
  • Dort sucht man danach und überzeugt sich4 besser davon, was man kennen will.
    そこでは自分の知りたいことは自分で調べて納得するのが望ましい。
    * 人4 (von 物3) überzeugt (物3について)〜に納得させる
      sich4 (von 物3) überzeugt (物3について)納得する
  • Die Bemühungen des Engels kehren sich4 immer nach dem übernächsten Tag.
    その天使の努力はいつも明後日の方向を向いている。
    * kehren (ある方向に)向ける
      sich4 kehren (ある方向を)向く
  • Sie wollte sich4 daraus nicht rühren, bis er ja nicht sagte.
    彼がうんと言うまで、彼女はその場を動こうとしなかった。
    * 人4/物4 rühren 〜を動かす/sich4 rühren 動く
    * bis, bevor などの接続詞に導かれる副文が「〜するまでは(〜しない限り)...しない」の意味になると、本来は不必要な nicht がしばしば挿入される。
  • Die Schildkröten wendeten sich4, denn das Tier ließ ein Erdbeben entstehen.
    そいつが地震を起こしたので、亀がひっくり返った。
    * 人4/物4 wenden 〜をひっくり返す/sich4 wenden ひっくり返る
  • Wir spielen so jetzt, aber wir werden uns4 noch teilen müssen.
    こうやってふざけてるあたしたちも、いつかは(行く道が違うから)お互いに別れないといけないのよね。
    * 人4/物4 teilen 〜を分ける、分割する/sich4 teilen (互いに)分かれる、別れる
ぽいんと、だよ。

■他動詞が再帰代名詞と一緒に使われると自動詞のような意味になったり、相互的な意味を 持つようになったりするけど、自動詞が再帰代名詞と一緒に使われると「〜した結果、...のような 状態になる」という意味になるよ。

Sie hat sich4 in den Schlaf geweint.
(彼女は泣き疲れて眠ってしまった)

この例文だと、weinen(泣く)っていう自動詞が再帰代名詞と一緒に使われてるから、 「泣く」という動作をした結果「彼女」が経験した「眠りの中へ(in den Schlaf)」という状況が前置詞句で 表されてるよね。

この場合は前置詞句が状況を表す言葉として使われてるけど、前置詞句の他にも、 形容詞や副詞も使われるよ。

それで、実は他動詞の場合でも、再帰代名詞が一緒に使われることで自動詞的な意味に変わっちゃう うえに、状況を示す語句が文中に現れると結果を表すことができるんだって。

Sie hat unter meiner Augen nackt sich4 ausgezogen.
(彼女は俺の目の前で衣服を脱ぎ捨て裸になった)

aus|ziehen はもともと「〜の(着ている衣服を)脱がせる」という意味の他動詞で、 「(衣服を)脱ぐ」という自動詞的な意味はないんだけど、再帰代名詞 sich と一緒に 使われることによって自動詞的な意味になったうえに、状況を示す形容詞 nackt(裸の) が加わって「脱いで(脱いだ結果)、裸になった」という解釈になるんだよ。
(…でもこんな動詞をわざわざ例文に使うことないのにね。おにいちゃんは良くても、説明を任された わたしが恥ずかしいよぅ)

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