第21章 比較構文

☆比較級

Die Kleine mag weit mehr den Elefant als die Giraffe.
◆その幼女はキリンよりもゾウの方がずっと好きだ。

比較の文は、形容詞・副詞の比較級と、接続詞 als を用いることで表現できます。
als はいちおう接続詞という位置付けになりますが、比較の対象として als の後に置かれる のはたいてい名詞(or 代名詞/人称代名詞)のみ、または前置詞句のみになります。

これは英語の比較表現でも説明されたと思いますが、もともと als は従属接続詞であるから 副文を構成する要素として解釈してあげるのが正しいのですが、副文の中に置かれた「比べられ るもの」に準ずる語句要素が、主文における「比べるもの」に準ずるそれらとまったく同じに なってしまうので、別に省略しても不都合はないだろう、とされるためです。

例文の場合、本来 als の後ろには die Kleine die Giraffe mag という語句が続き、 「その幼女がキリンを好きだということよりも」という解釈になります。
しかし、 「その幼女がキリンを好きだということよりもその幼女がゾウを好きだということの方がずっと程度的に 甚だしい」とすると物凄くくどくなりますから、主文と同一の主語である die Kleine と 動詞 mag は省略されて、結果的に直接目的語 die Giraffe のみが残ってこのような形になっ たと考えてもらうとよいでしょう。

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基本的に形容詞・副詞の比較級は、原形に英語と同じような語尾 -er をつければつくる ことができますが、(1) -el/-en/-er で終わっている形容詞は比較級で e の脱落が起こったり、 (2) もともと -e で終わっている形容詞には比較級で r がつくだけだったり、 (3) 1音節(母音が一つだけ)の語では母音にウムラウトがついて発音が変化したりします。

(1)
heikel(微妙な:比較級 heikler)
teuer(貴重な・高価な:比較級 teurer)
finster(暗い:比較級 finstrer)など
* schwer(重い)のように er の発音が「エーァ」となる場合は e は落ちない。

(2)
mühe(疲れた:比較級 müher), weise(賢い:比較級 weiser)など

(3)
scharf(鋭い:比較級 schärfer)
rot(赤い:比較級 röter)
kurz(短い:比較級 kürzer)など

特殊な比較級としては、形容詞に

besser(原級:gut), mehr(原級:viel), weniger/minder(原級:wenig)

があり、副詞に

besser(原級:wohl), eher(原級:bald), lieber(原級:gern), mehr(原級:sehr)

があります。

この比較級も、原級の形容詞と同じように付加語的に用いられる場合のみ格変化を示す語尾が つきますが、そのときの変化は比較級の語尾 -er の後に更に格語尾がつくという形になります から、見た目にはちょっとややこしくなります。

ein kleineres Mädchen
(もっと小さい女の子)

上の例では、原級が klein という形である形容詞に、まず最初に比較級になるための語尾 -er が 加わり、付加語的に名詞にかかっているのでその上でさらに混合変化中性1格の格語尾 -es が 加わって、最終的に -eres という語尾が大元の形容詞にくっついた形になっています。

このとき「ァ(ー)」と発音されていた比較級の語尾 -er は、格語尾がつくことによって、母音に なっていた r が再び子音として復活するため、「ェ」という曖昧な音に変化します。
上の例の場合、比較級 kleiner が「クライナァ」という発音であるのに対し、格語尾のつい た kleineres は「クライネレス(クライヌレス)」という発音になるわけですね。

☆最高級

Das Mädchen mit Zwillingsschwänzen ist das boshafteste von den fünf Nachbarn.
◆その5人のご近所さんの中ではツインテールの娘がいちばんやんちゃです。

最高級は、原則として形容詞に -st の語尾をつけることで表現できます。
ただし、例文のように t (または -s/-ss/-ß/-x/-z)で終わる形容詞については 口調上の e が挿入されて -est の形になります。
また、比較級のところでも説明したように、1音節の形容詞で母音にウムラウトがつくものがあります。

最高級の表現を作るときに、その基準となる範囲(〜の中で)は、対象となるものによって さまざまな前置詞が挙げられますが、一般的なものの場合、 例文のように von が用いられます。
(地球上でいちばん、世界でいちばん、なんていう場合は auf を使って auf Erde(n) や auf der Welt といいます。)

また、最高級になった形容詞は、必ず定冠詞と一緒に用いられます。
その際、付加語的に用いられたときは定冠詞の性質に従って、最高級の語尾 -st のあとに弱変化 の格語尾をつけるとよいのですが、例文のように述語として用いられる場合でも定冠詞を付けて、 「いちばんやんちゃなもの(女の子)」のように名詞化してあげなければなりません。 この場合、定冠詞の性は主語の性と一致します。

述語として用いられたときも、付加語的に用いられたときと同じように定冠詞を伴うので、 格語尾は弱変化になります。
例文の場合、das boshafteste Mädchen の Mädchen が省略されたものと考えれば わかりやすいでしょう。

副詞的に用いられる場合の最高級は am -sten という形になります。

例)
lebendig(活気のある)→ am lebendigsten(もっとも生き生きと)
fröhlich(楽しそうな)→ am fröhlichsten(もっとも楽しそうに)

特殊な最高級としては、形容詞に

best(原級:gut), meist(原級:viel), wenigst/mindest(原級:wenig)

があり、副詞に

am besten(原級:wohl), am ehesten(原級:bald), am liebsten(原級:gern), am meisten(原級:sehr)

があります。

(*) 例文のように -t で終わる形容詞に最高級の語尾 -st をつけたいときは口調を調えるために e が挿入されますが、形容詞化した現在分詞(reizend など)に最高級の語尾 -st をつけたい ときは、同じ t の音で終わっていても口調上の e が挿入されず、reizendst のような 形になります。その際の発音は -tzt で終わる語と同じような発音(「〜エンツト」)になります。

☆その他の比較表現

Das ist mir unglaublich, dass so ein Spielzeug so teuer*1 als ein billigeres Gebrachtwagen kostet.
◆こんなオモチャが下手な中古車と同じぐらい高価だなんて私には信じられない。(同等比較)
Sogar ich habe so viel zwecklose Kenntnisse nicht als jenes Tier.
◆俺でもあいつほどたくさんムダ知識を持ってないよ。(同等比較の否定)
Die Fortsetzung soll auch doppelt so dumm werden als das frühere Werk.
◆その続編は前作に比べて馬鹿さ加減も2倍になるらしい。(倍数比較)
Ich möchte Sie sehen aus der Augenhöhe, die um 10cm höher als jetzt ist.
◆今よりも10cm(だけ)高い目線であなたを見たいな。(差比較)
Gib mir lieber das Geld als das Mitgefühl!
◆同情なんかよりもむしろ金よこせっちゅーてんねん。
Er hat dadurch eher eine neue Seite der Geschichte gemacht als einen Erfolg gehabt.*2
◆彼はそのことで成功を収めたというよりは、むしろ歴史の新たなる1ページを作り上げた。
Nichts muss weicher sein als die Backe einer Winzigen!
◆チチャナオナノコのほっぺたよりもふにふにしているものなんてないはずだ!
(=チチャナオナノコのほっぺたがいちばんふにふにしているはずだ!)
*1 この teuer は副詞(的に用いられている)。
*2 machen も haben も完了の助動詞として haben をとるので後半の hat を省略しているが、もちろん haben と sein をとる動詞を比較する場合は als 節のラストにも助動詞を置かなければならない。

最後に、同等比較や倍数比較、差比較などの日常ではよく使われそうな表現をまとめて 説明しておきましょう。

まずは同等比較についてですが、1つ目と2つ目の例文を見ていただくと、もともと気持ちだけ 程度を強調する副詞である so と比較の接続詞 als とで、形容詞または副詞の原級を挟んでいる という形になっているということがわかると思います。

これはまったく英語の as/so (原級) as 〜 と同じことで、定動詞の位置が変わったりする というドイツ語独特の規則を離れて比較表現の部分のみに注目すれば、英語の同等比較と 変わらないということになるのです。
無論2つ目の例文の nicht は英語の not とは性格が違いますから、否定文の場合になると まったく同じとは言えませんけど。言い回しと構文の関係については、英語の同等比較を 理解できている方ならなんとなく雰囲気がつかめるのではないかと思います。

次に倍数比較。
倍数比較も、英語で twice/three times/four times/... as (原級) as と言っていたのと 同じようにしてもらえれば結構です。
ドイツ語の場合、twice(2倍)が doppelt にあたり、three times, four times(3倍、 4倍)…には数詞と「倍」を表す mal を融合させた dreimal, viermal… をあてはめればOKです。

半分は halb、〜分の1は -tel、1.5倍は anderthalb、パーセントは 〜 Prozent という感じですね。
あまり実用的な例ではありませんが、「俺は昨日の1.74倍強い!」と言いたいときは

Ich bin anderthalb und 24(vier und zwanzig) Prozent so stark als gestern!

とすればいい訳ですね^^;

それからもう一つ、差比較。
英語ではこの差比較を前置詞 by を用いることによって younger by three(3歳[だけ]若い) というふうに示しましたが、ドイツ語でも同じように前置詞 um を用いて示します。

同等比較と倍数比較の場合は so + 原級 という形でしたが、この差比較の場合はふつうに 比較級と一緒に用います。このあたりも英語と同じですね。

ぽいんと、だよ。

■比較の接続詞 als と「比較される語句」は、ふつう枠構造の外に置かれるよ。
(→「その他の比較表現」の3つめ、7つめの例文を参照してね)

■比較級を「はるかに」「ずっと」みたいな感じで強調したいときは、「比較級」のところの 例文のように weit を使うほかにも noch や viel なんかが使われるよ。

■最高級の表現で、「今まで〜してきた中で一番の」のような言い回しをつくるには、 接続詞 als や前置詞 von を使うんじゃなくて、関係代名詞を使ってね。

Das ist das aufregendste blümige Spiel, das ich je getan habe.
(これは俺が今までプレイしてきた中でいちばんハァハァするエロゲだ)

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