第23章 接続法IIを用いた非現実話法

Wenn ich die kleine Schwester hätte, wollte ich von ihr alle Männer fegen, die ihr sich nähern.
◆もし僕に妹がいたなら、僕は彼女に寄りつくあらゆる野郎どもを払いのけるつもりだ。

前章に続き、接続法を使った構文のお話です。

この章で説明する「非現実話法」でも、前章の「間接話法」と同じように「確からしくない」 シーンが叙述されるために、接続法が用いられます。

例文の対訳を見てもらってもわかる通り、話し手は一旦「もし妹がいたなら」と仮定してい ますが、当然のようにこの「仮定」というのは、現実の世界では起こっていない、または 起こり得ない事柄を「仮に起こると見立て」ることをいいます。

もちろん、現実の世界で起こっていなかったり、起こるはずもないようなことを 「ある事実」として認めることはできませんから、「これこれこういう内容の事実が 確実にある(あった)」ということを表現する直説法に対して、「事実ではないが、もしも こうだったならば」と仮定するのは接続法を用いることによって実現できるというわけですね。

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さて、「非現実話法」の文章を作るのにも、いろいろな決まりがあります。
まずはこの構文を作るために使われる「接続法II式」の活用形について触れてみましょう。

接続法II式は、規則変化動詞の場合、直説法過去とまったく同じ変化をします。

例) suchen
ich suchte
du suchtest
er/sie/es suchte
ihr suchtet
wir/Sie/sie suchten

しかし、不規則活用動詞の場合は、接続法II式の語幹の形は様々です。
辞書の動詞活用欄に「接続法II式基本形」というのが載っているはずなので、なにか適当な 動詞を選んで、その基本形を見てみてください。

ここでは、denken を例にとってみます。
denken の接続法II式基本形は、辞書だと dächte と示されています。
この「基本形」に、人称ごとに以下のような活用語尾をつけます。

ich dächte(無語尾)
du dächtest
er/sie/es dächte(無語尾)
ihr dächtet
wir/Sie/sie dächten

接続法II式の基本形は、動詞の過去基本形の母音にウムラウト(をつけて更に語尾に e )がつくものが多いですが、

例)
kommen → 過去基本形 kam → 接続法II式基本形 käme
lesen → 過去基本形 las → 接続法II式基本形 läse
nehmen → 過去基本形 nahm → 接続法II式基本形 nähme
schließen → 過去基本形 schloss → 接続法II式基本形 schlösse

kennen のように過去基本形からは導き出すのが難しいものもあります。

例)
kennen → 過去基本形 kannte → 接続法II式基本形 kennte
brennen → 過去基本形 brannte → 接続法II式基本形 brennte

sein, haben, werden の3つの動詞と話法の助動詞の接続法II式の形は非常によく使われるので、 必ず覚えて置いてください。

sein → 接続法II式基本形 wäre
haben → 接続法II式基本形 hätte
werden → 接続法II式基本形 würde

* 話法の助動詞の活用については13章「話法の助動詞」を参照。

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活用について理解していただけたところで、いよいよ構文の説明をします。 英語の仮定法にあたるこの「非現実話法」は、基本的には従属接続詞 wenn を用いて

Wenn ・・・ (接続法II式の形の定動詞) , (接続法II式の形の定動詞) ... .

のような形で表されます。
wenn を使った副文のほうが「もし〜なら」、それに続く主文がその結果を示す内容になります。
非現実話法の構文においては wenn の副文が主文に先行する場合が多いですが、主文が 命令文や疑問文の場合は、命令文や疑問文の特徴にしたがえばこれらを途中から始めることは できないので、副文が後ろになります。
通常は副文が主文よりも先に置かれるので、現在時称だと上の図のように副文の中で 後置された接続法II式の形の定動詞と、主文で第1位になる接続法II式の形の定動詞が コンマ越しに隣り合わせになるというわけです。
(副文が先行したとき、主文の定動詞が第1位に置かれる理由については12章「枠構造と 副文・dass文」の「ぽいんと、だよ」を参照のこと)

上の構文は現在時称で「(今)もし〜なら、〜だ」と言いたいときのものですが、 「(あのとき)〜だったなら、〜だっただろう」というふうに過去時称で言う場合は次のようにします。

Wenn ・・・ (過去分詞) hätte/wäre, hätte/wäre ... (過去分詞).

直説法では「現在完了時称」として扱われていた haben/sein + (過去分詞) の構文のうち、 助動詞 haben/sein のみが接続法II式の形になって hätte/wäre となっています。

実は接続法には「現在」「過去」「未来」「未来完了」の4つの時称しかないため、 直説法で「現在完了」となっていた形が、接続法では「過去」として代用されるのです。

また、さきほど接続法II式の活用についての箇所で「規則動詞の場合、直説法過去と同形」と 書きましたが、前章で紹介した間接話法でも、接続法I式の形が直説法現在形と同じ形であった ときに接続法II式で代用されることがあると書きました。覚えているでしょうか。

この「非現実話法」のときも、接続法II式の活用が直説法過去形と同形の場合は、 werden の接続法II式が用いられて

würde(st/t/n) + 不定詞

の形が頻繁に代用されます。
例文の場合、wollte が直説法過去と同形になっていますので、後半の主文を

würde ich von ihr alle Männer fegen wollen

と言い換えることもできます。

そして、英語やフランス語にもあるように、「〜があったら/〜なしでは…だろう」と言いたい 場合は主文を mit/ohne ... に置き換えることもできます。
この場合、wenn で始まる副文の構造自体が消えてしまうことになるので、mit/ohne による仮定の 前置詞句は一つの文の中に収まることになります。

Wir könnten mit ihm ein tieferes Gespräch haben.
彼がいたらもっとコアな話ができるのになあ)

もっと例文!
  • Wenn ich eine Frau wäre, würde ich als eine Hausangestellte in einem Kaffee arbeiten.
    もし僕が女だったら、喫茶店でメイドさんとして働いているだろうな。
    (* もちろん würde 〜 arbeiten は arbeitete と同じ。過去基本形と同形の場合は口語では würde + 不定詞 で言い換える方が好まれる。)
  • Wenn sie noch jetzt leben würde, könnten wir miteinander über unsre Zukünfte fröhlich sprechen.
    もし彼女が今でも生きていたら、お互いに将来のことを楽しく語り合えるのにね。
  • Wenn du von Anfang an um Hilfe mich gebeten hättest, wärst du solch einem Unglück nicht entgegen, ja?
    そもそも最初っからあたしの助けを借りてりゃ、そんなヒドイ目に遭うこともなかったんじゃない?
    (* 話し言葉では sein の接続法II式 wäre の e が du/ihr の活用で抜けることがある)
  • Wenn Sie den Brief gelesen hätten, wären Sie verwünscht worden.
    もしもその手紙を読んでいたら、あなたは呪われていたでしょう。
  • Wenn ich ein wenig hinten treppauf gestiegen wäre, hätte ich die Schlüpfer der vorausgehenden Schülerinnen gesehen.
    もし階段を上る時にもうちょっと後ろ側を歩いていたら、前を行く女子生徒のおぱんつが拝めていただろう
  • Ich ässe Kuchen ohne Brote.
    パンがなかったらケーキを食べるわ。
ぽいんと、だよ。

■mit/ohne 以外にも「an seiner Stelle」(〜の 立場だったら)みたいにいろいろな前置詞句を副文の代わりにして非現実話法の文が作れるよ。

■wenn じゃなくて als ob を副文の始めに持ってくる文を特に「非現実の比較文」といって、 「あたかも〜であるかのように」という意味をもたせることができるよ。

Er hat umsonst gehandelt, als ob er menschenlich rechter Mann gewesen wäre.
(彼はあたかも人道的に正しい人間のように振る舞ったが、しくじった)

■あと、仮定的な構文でよくある「たとえ〜でも」という言い回しは、ドイツ語では

(und) wenn auch ... 接続法II/直説法の定動詞

という形で使われるから、余力があったらついでに覚えておいてね。

Und wenn ich auch zwölf kleine Schwestern hätte, bin ich jedenfalls so beschäftigt.
(たとえ妹が12人いようが、どのみち忙しいことに変わりはない)

* 主文が前に出た場合、und が省略されることがあるよ。
Ich bin jedenfalls so beschäftigt, (und) wenn ich auch zwölf kleine Schwestern hätte.

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