第24章 分詞構文

Die Vorsitzende greift den Genger an, ein Wörterbuch schleudernd.
◆その委員長は辞書を投げつけることで相手を攻撃します。

さて、いよいよ最後の章となります。

分詞構文については、英語の授業でも教えられたかそうでないかが分かれるぐらいですし、 フランス語では過去分詞構文が現在分詞構文にくらべてえこひいき的によく使われるなど、 いまひとつ説明の必要性に疑問を感じる項目ではあるのですが。

それでも、実際に会話で使われる場面もあったり、数ある文法書籍の中でいくつかこれを 取り上げているものがあったりするので、負けじと章を作ることにしました。

 

分詞構文とは何かを説明する前に、まずは「現在分詞」と「過去分詞」について、その形と 性質を把握してもらいます。

現在分詞は、動詞の不定詞の形に d をつけることによってつくられ、分詞構文以外の用いられ 方としては、形容詞と同じような働きをします。
ただし、現在分詞はたいてい付加語的に名詞を修飾するだけの機能しか持っておらず、述語と しても使えるのは「完全に形容詞になりきった」現在分詞だけです。
述語として使う必要がある場合は、その現在分詞が形容詞として認められているか、逐一辞書で 確認するようにしましょう。

(*) sein, tun のみ現在分詞の形が特殊です。
sein → seiend
tun → tuend

一方過去分詞は、14章「直説法における過去時称と未来時称」や16章「受動態」でも登場した ものと同じです。
基本的には動詞の不定詞の形の頭に ge をつけて、活用語尾 en を t とすれば過去分詞が できあがるのですが、不規則なものもたくさんあります。特に活用語尾の en がそのままだったり、 語幹の母音が変わったりするものが多いので、不規則な過去分詞をもつものについては その形を辞書でよく確認するようにしてください。

この過去分詞も、現在分詞と同様形容詞のように名詞を付加語的に修飾し、自動詞の過去分詞の 場合はその行為が済んでしまっていること(完了的な意味)を、他動詞の過去分詞の場合は 受動的な意味を示します。

自動詞の例)fallen → gefallen
gefallenes Mädchen(転んだ女の子)

他動詞の例)wählen → gewählt
gewählter Mann(選ばれた人)

 

この現在分詞と過去分詞を、副文を形成する従属接続詞のもつ意味を含みこんだ副文中の 定動詞の代わりとして使った構文が、分詞構文です。

副文を形成する従属接続詞は、理由を示す weil(〜だから)、同時性や手段を 示す indem(〜しながら/〜することによって)、譲歩を示す obwohl(〜にもかかわらず)、 目的を示す damit(〜するために)、仮定を示す wenn(もしも〜なら)など、それぞれ 主文へ繋げるための意味を持っています。

この従属接続詞のもつ意味を、副文の中で使われている定動詞(また は werden/sein + 過去分詞 で表される受動態)と融合させると、現在分詞/過去分詞を 核とした副文がつくられます。

ここで例文を見てみましょう。
コンマ以前の

Die Vorsitzende greift den Genger an

の部分はそれ自体で意味が把握でき、従属接続詞も置かれていないので主文だとわかりますね。
残ったコンマよりあとの部分、

ein Wörterbuch schleudernd

が副文であるはずなのですが、よく見ると従属接続詞の姿が見当たりません。 どう見ても、ein Wörterbuch という名詞と、schleudernd という現在分詞の2つしか ありません。そもそもこれは文なのだろうか、と考えてみたくもなるでしょう。

主文の規則からも副文の規則からも少しズレていますが、これはれっきとした文であり、 副文とみなされます。なぜかというと、動詞(この場合は現在分詞の形ですが)がいちばん うしろにあるから。

「定動詞後置」という規則を思い出してみてください。副文の中で活用させた定動詞は、 必ず副文の末尾にありましたよね。
ここでは活用形ではなく現在分詞ですが、もとは同じ動詞なので、「定動詞後置」の規則と 同じように解釈され、この文は「従属接続詞のない副文」と見られるのです。

では、従属接続詞はいったいどこへ消えたのか。

答えは、現在分詞 schleudernd が持っています。
この文だと、「辞書を投げることで」という対訳があるので、従属接続詞 indem が必要で すが、この indem の意味を現在分詞 schleudernd が内包しています。

現在分詞を使わず、従属接続詞 indem と schleudern の活用形とを使ってふつうに副文を 作るとすれば、

(主文), indem sie ein Wörterbuch schleudert.

となりますよね。
この副文における、従属接続詞 indem と、schleudern の活用形 schleudert の働きを 合体させたものが、例文中にもある現在分詞 schleudernd だというわけです。
つまり現在分詞には、ある従属接続詞の意味が内包されていて、それ自体は動詞の意味を 示していることになりますから、一度で二度効くコンバなんたらかんたら、のような感じになるのです。

 

現在分詞構文の場合は「(副文の)定動詞に従属接続詞の意味を持たせたもの」と解釈できますが、 過去分詞構文の場合は受動の意味が含まれるので、「(副文の)werden/sein + 過去分詞 で示される 受動の動詞句に従属接続詞の意味を持たせたもの」というふうに解釈しなければなりません。

Von der schweren Krankheit befallen, lächelt sie immer.
(重い病気に冒されているにもかかわらず、彼女はいつだって笑顔だ)

この過去分詞 befallen は、「冒されている」という受動の意味で用いられていますから、 過去分詞構文でなくふつうに従属接続詞 obwohl を用いて叙述した

Obwohl sie von der schweren Krankheit befallen ist, lächelt sie immer.

の太字部分に obwohl の意味を含ませたものとして使われているわけですね。

もっと例文!
* 上から4つが現在分詞構文、その後の3つが過去分詞構文です。
  • Sie zwang die Umwohner zum Umzug, mit lauten Schreien das Bett schlagend.
    彼女はやかましい叫び声とともにフトンを叩きながら、隣人に引越しを強要した。
  • Mit Ihnen seiend, liebe ich diese Schule, diese Stadt, und auch alles andere.
    あなたと一緒にいるから、この学校も、この街も、みんなひっくるめて好きです。
  • Den Computer tief gebrauchend, bin ich schwach in der Handlung der Bürosoftwares.
    コンピューターを使い倒しているにもかかわらず、オフィス系のソフトの扱いは苦手だ。
  • Über dich siegend, werde ich um einen Dienst dich bitten!
    俺が勝ったら、君にごほうししてもらうからなっ。
  • Ich will unendlich gehen können, von weizenfarbigen Winden nach vorn gestoßen.
    小麦色の風に吹かれて、どこまでも行けそうです。
  • Für einen unbedingten Bereich gehalten, ist der Teil nicht zu berühren.
    絶対的な領域とされているので、その部分に触れるべきではない。
  • Erinnern Sie sich bitte an diese Grammatiklektionen, in Deutschland gesprochen!
    ドイツで誰かに話しかけられたら、どうかこの文法レッスンのことを思い出してくださいね!
ぽいんと、だよ。

■現在分詞・過去分詞をおしりに持ってきた文も副文と見なされるから、こっちの方が 主文よりも先に置かれたときは、ふつうの従属接続詞がある副文のときと同じように、 あとに続く主文の定動詞が1番目になるよ。
(→「もっと例文!」1つめ・2つめ・3つめ・5つめの例文を参照してね)

■分詞構文は、もともと形容詞のように使われる現在分詞・過去分詞が副詞的に使われる ときの文を拡張させたものだから、主文と副文の主語は同じになるよ。

●副詞的に使われる現在/過去分詞に、目的語など他の要素がない場合
Sie ist ins Klassenzimmer singend eingetreten.
(彼女は歌を歌いながら教室に入ってきた)

●副詞的に使われる現在/過去分詞が、他の要素を伴う場合(分詞構文)
Sie ist ins Klassenzimmer eingetreten, fröhlich singend.
(彼女は楽しそうに歌を歌いながら教室に入ってきた)

■従属接続詞が nachdem の場合みたいに少ないけど、主文のできごとが 起こった時点で副文の中のできごとが完了してしまっていることを示すに は、habend/seiend + 過去分詞 の形を使うんだよ。

Uns geduscht habend, gingen wir ins Bett.
(シャワーを浴びてから、私たちはベッドに向かった)
(=Nachdem wir uns geduscht hatten, gingen wir ins Bett.)

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