Chapitre.14 - 受動態と使役構文

Zut! Nous avons été embarassés!
ちっ、邪魔が入ったか。(我々は邪魔された)

◆受動態

 ある人間が何らかの動作を起こす様子を表す能動態に対して、受動態は相手から何らかの動作を受ける様子を表
します。仏語ではこの受動態を

  êtreの活用形+動詞の過去分詞

 の形で表します。このとき、過去分詞の形は主語の文法上の性・数を受けて一致します。
 また、受動の種類には例えば「殴られる」や「叱られる」などの一時的な受動動作を受けていう「動作受動」と、
「愛されている」や「知られている」「騙されている」などのように長期的あるいは普遍的に行われる受動動作を
受けて言う「状態受動」の2つがあります。

 受動態の動作主を示す時、これらのうち「動作受動」であるか、「状態受動」であるかによって使用される前置
詞が異なり、動作受動の場合は par、状態受動の場合は de が使用されます。また、どちらの場合でも à を用
いることができます。
 ただし、動作主を意図的に特定しない場合は動作主を示すための前置詞句は置かれず、また、動作主が特定した
くてもできないような場合には「不定代名詞 on を使った受動表現」を用います。
 この on を使った受動表現とは、不定代名詞 on を「誰かわからない人」というように意味付け、それを主語に
して文を始めることにより、「誰かわからない人が〜を(に)…する」すなわち「(誰かわからない人に)〜が…
される」という受動的な解釈を導こうとするものです。
 理解が行き届かずあやふやな方のために一つ例を示してみます。

  Je sens qu'on m'observe.

 「Je sens que ...」は「〜と感じる、〜という気がする」という構文ですが、受動態の説明には邪魔な存在で
すので折角例文には含めましたがこれを取り除いて考えてみます。すると、

  On m'observe.

 となります。これを先ほど説明した解釈に当て嵌めてみると、「誰かわからない人が私を観察する」という訳に
なりますね。無論これは直訳であり、受動的な意味にはなっていませんので、更に少し工夫してあげることが必要
です。「私」を主語、「誰かわからない人」を動作主に見立てた受動的な解釈をこの直訳から導いてみましょう。
「私は(誰かわからない人に)観察される」という解釈が頭の中で無事に導き出されましたか?
 そうすれば、あとは「Je sens que ...」の訳と結び付けて、「私は私が(誰かわからない人に)観察されると
感じる」、としてもどこかぎこちない訳なので「私は誰かに見られているような気がする」とすれば自然な訳にな
ることと思います。

 受動態の用法で、一つ注意すべき点があります。それは、動詞の間接目的語は受動態の主語にすることができな
い、ということです。英語では、例えば「父は娘にプレゼントを贈る」という能動態の文に対して2通りの受動態
の文が作れ、それぞれ「娘は父からプレゼントを贈られる(娘が主語)」「プレゼントが父によって娘に贈られる
(プレゼントが主語)」となりますね。
 しかし、仏語ではこのうち娘が主語となる受動態の方が文法ミスとなります。実際に仏語に直して考えてみまし
ょう。最初の父が主語の能動態の文は

 Le père offre un cadeau à sa fille.

 と訳されます。見ての通り、動詞 offrir の直接目的語は un cadeau となり、間接目的語が (à) sa fille と
なります。直接目的語 un cadeau を主語とし、先ほどの「プレゼントが父によって娘に贈られる」という受動態
の文を作ってみましょう。

 Un cadeau est offert à sa fille par le père.

 となります。が、普段このような言い回しをするようなことはあまり多くないですよね。どちらかと言えば回り
諄い表現です。会話でなら、圧倒的に娘が主語の受動表現を用いることが多いはずです。ですが、

 Sa fille est offerte un cadeau par le père.

 のような英語では罷り通る受動態は、仏語ではアウトになります。ではこの場合、娘を主語にした受動態を表現
するにはどうすればいいのでしょうか。
 実は、一番最初の父が主語の能動態の文を少しいじってやることで、娘を主語とまではいきませんが、父から娘
にスポットライトを移した表現を作ることが可能になります。

 Sa fille, le père l'offre un cadeau.

 これで「娘は父からプレゼントを贈られる」という文を訳すには十分です。
 娘を文頭にもってきて、その後で最初の父が主語の能動態の文を間接目的語 la を用いて言い換えただけです。
所有形容詞が文頭にあるので少し違和感があるかもしれませんが、強調のためには、定冠詞のついている名詞より
後にその名詞が所有するものを持ってくる必要は必ずしもないのです。


 D'autres expressions もっと例文!


Tu seras puni par le ciel si tu fais pleurer une fille.
女の子を泣かせたりなんかしたら天罰が下るぞ。

◆使役構文

 使役構文は、その名の通りある人にある行為をするように仕向ける様子を表現するために使われる構文で、仏語で
は仕向ける行為を示す動詞が自動詞であるか、目的語を伴わない他動詞である限り

 faire (不定詞) (仕向けられる人・物)

 の形をとります。ただし、これは仕向けられる人や物が通常名詞である場合の語順で、人称代名詞が使われる場合
は語順が少し変わって

 (仕向けられる人・物を指す人称代名詞の直接目的語) faire (不定詞)

 のように人称代名詞が直接目的語の形で faire に先行します。

 仕向ける行為を示す動詞が他動詞で、なおかつ直接目的語を伴う場合、解釈が少しややこしくなってきます。たと
えば、

 Il fait peindre sa femme.

 という文があるとします。peindre は「(絵など)を描く」という意味の動詞ですが、文中では直接目的語として
sa femme(彼の妻)を伴っています。このような場合、2通りの使役的な訳が考えられます。
 1つ目は sa femme を peindre の直接目的語と考えた場合の、「妻(の絵)を描くように仕向ける」、という主
旨の訳です。しかし、この訳では“仕向けられる人”が示されていません。
 実は、“仕向けられる人”の表記は任意であり、対象を特定せずに「誰かに〜させる」と言いたい場合や、「泣か
せる映画だ」など対象が普遍的である場合などには省略することもできるのです。したがって、このように“仕向け
られる人”が省略されたものと考えた場合、上記の文の訳は「彼は(誰かに)妻の絵を描かせる」となります。
 2つ目は、sa femme を peindre の直接目的語ではなく主語にあたると考えた、「妻が描くように仕向ける」と
いう主旨の訳です。この場合は目的語が示されないことになるので、「彼は妻に(何か)絵を描かせる」という訳に
なります。

◇sa femme が peindre の直接目的語の場合

 彼(il)--(fait 仕向ける)-->誰か特定されない人--(peindre 〜を描く)-->彼の妻(sa femme)

◇sa femme が peindre の主語(仕向けられる人)の場合

 彼(il)--(fait 仕向ける)-->妻(sa femme)--(peindre 〜を描く)-->何かの絵

 もう少し分かりやすい例が manger です。次の文を見てください。

 Elle toujours fait manger les pigeons au parc.

 「彼女はいつも公園でハトに餌をやっている(ハトに食べさせている)」という文です。これは les pigeons が
主語となり、彼女に食べるという行為を仕向けられていると解釈したパターンで、manger が目的語を持ちません。
では、les pigeons を manger の直接目的語と考えるとどうでしょう・・・一転して恐ろしい訳になりますね。今
度は“仕向けられる人・物”が示されないことになるので、「彼女はいつも公園で誰かにハトを食べさせている」と
いう訳になります。そもそもハトって食べられるのかよ・・・なんて突っ込みたくなります^^;

◇les pigeons が manger の主語(仕向けられる物)の場合

 彼女(elle)--(fait 仕向ける)-->ハト(les pigeons)--(manger 〜を食べる)-->何か餌になるような物

◇les pigeons が manger の直接目的語の場合

 彼女(elle)--(fait 仕向ける)-->誰か特定されない人--(manger 〜を食べる)-->ハト(les pigeons)

 直接目的語を伴う他動詞が“仕向ける行為”として使われるケースでは、不定詞の後に置かれる通常名詞は使役の
主語となることも、動詞の目的語となることも可能ですが、“仕向けられる人・物”が明示されるときは動詞の目的
語にしかなり得ません。

 faire (他動詞) (通常名詞) par (仕向けられる人・物)

 とすれば、不定詞の後に置かれた名詞は仕向けられる人や物が前置詞 par を介して既に示されているので直接目
的語になる以外になく、意味の上ではただ1通りに「(仕向けられる人・物)に…を〜させる」というように訳され
ます。

 使役構文には、この他にも se faire という代名動詞の形で使われるものがあります。
 これは「〜させる」という情け容赦も無いような強い意味ではなく「〜してもらう」という相手の立場を気遣いな
がらの控え目な意味を示します。
 大抵の場合は「〜してもらう」という訳でも良いのですが、続く不定詞が自動詞の場合や、自分のためにはならな
い、有り難くない内容の他動詞だと訳が変わってくる場合があります。例えば

 Je me fais rire.

 Il s'est fait percuter par un camion.
 (se faire の構文では仕向けられる人・物は必ず par を伴って示す)

 というような文を考えます。上の文は rire(笑う)という自動詞が使われています。これを「〜してもらう」と
いう訳と組み合わせてみると、「私は笑ってもらう」となります。確かに芸人が言いそうな言葉ですが、rire は他
動詞となる時には de を伴う間接目的語をとるので、この訳は間違った訳となるのです。正しくは、「私は私自身に
笑うよう仕向ける」であり、苦境に置かれても自分から進んで笑いを作るようにする、というような場面において用
いられます。もう少し自然な訳に直すとすれば、「私は笑うようにしている」でしょうか。

 一方、下側の文を「〜してもらう」という訳と組み合わせてみると、「彼はトラックにはねてもらった」となり、
明らかにあやしい訳になってしまいます。このように、自分に利益とならない他動詞が用いられる場合は、使役の意
味の代わりに受動的な意味とし、「彼はトラックにはねられた」と言い直さなければなりません。

 使役構文で注意しなければならない規則としては、以下のようなものがあります。

  *使役動詞 faire は受動態では用いられない

    例えば「妹にマズイ飯を食べさせられる」と言いたいときに「私」を主語として
    Je suis fait manger de la mauvaise nourriture par ma soeur.

    と言うことはできず、妹の方を主語にして
    Ma soeur me fait manger de la mauvaise nourriture.

    としなければなりません。

  *使役動詞 faire の過去分詞 fait は直接目的語に先行されても性・数が変化しない
    Il nous a fait(e)s .... とはならず、Il nous a fait .... のようになります。


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◆受動態の動詞主は、

  1) 瞬間的な動作を示す「動作受動」の場合は par または à で
  2) 長期的な動作を示す「状態受動」の場合は de または à で
  3) 誰かが特定できないときは on を使った受動表現で

 それぞれ示されて、

  4) 特定しなくてもわかるようなときは省略してもよい

 んだよ。

◆間接目的語を受動態の主語にすることはできないけど、obéir、désobéir などでは例外的に間接目的語
 を主語にした受動態が作れるよ。

  例) Cet élève désobéit au professeur.
    (その学生は先生の言うことを聞かない)
     ↓
    Le professeur est désobéi par cet élève.
    (先生はその生徒に背かれる)

 これはかつて obéir、désobéir が直接目的語を従える動詞だったことの名残なんだって。

◆使役動詞としては他にこんなものもあるよ。

 permettre à (人) de (不定詞)   (人)に許可して〜させる、〜させてあげる(許可)
 mettre (人/物) à (不定詞)     (人/物)を〜するよう仕向ける(働きかけ)
 porter (人) à (不定詞)      (人)を〜するよう仕向ける
 pousser (人) à (不定詞/名詞)   〃
 amener (人) à (不定詞)      〃
 disposer (人) à (不定詞)     〃
 inciter (人) à (不定詞/名詞)   〃
 entraîner (人) à (不定詞/名詞)  〃
 forcer (人) à (不定詞)      (人)を無理に(強引に)〜させる(強制的)
 obliger (人) à (不定詞/名詞)   〃
 laisser (人/物) à (不定詞/名詞)  (人/物)に〜させておく(放任)

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