Chapitre.19 - 間接話法における時制の一致
Conformité de Temps dans le Discours Indirect

◆直接話法と間接話法

 間接話法における時制の一致の説明に入る前に、軽く直接話法と間接話法の違いについて述べておくことにします。
 まず、直接話法では発話者が言ったこと、考えたことなどが今現在伝えられているような調子で叙述され、その内容
はギュメ(《》)とよばれる引用符を用いて表されます。どうでもよいムダ知識かもしれませんが、この引用符は発案者
の名前 Guillaume(ギヨーム) に由来するそうです。

 Il nous dit toujours 《je crois que ma petite sœur est gentille et soumise.》
 (彼はいつも私たちに「うちの妹は大人しくて従順なんだ」と言う)

 ギュメを用いた直接話法の文では、発話者の発言や思考の内容を発話者自身の視点でそのまま叙述するので、セリフ
の中の主語は当然セリフ通りの人称や動詞の時制にしたがって訳されることになります。
 一つ覚えておくとよいかもしれませんが、仏文法においては直接話法の文でギュメを用いる場合、英語のようにキャ
ピタライズ(大文字で書き始めること)する必要はありません。また、基本的にギュメの直前にコンマなどを打つこと
もありません。

 次に、上の文をギュメを用いない間接話法の文で言い換えてみましょう。
 間接話法とは、直接話法に対して相手の側から発話者の動作、発言・思考の内容などをすべて一まとめに捉えてしま
う叙述方法のことをいいます。

 Il nous dit toujours qu'il croit que sa petite sœur est gentille et soumise.
 (彼はいつも私たちに妹は大人しくて従順なんだと言う)

 さて、ギュメが外れた点以外にどの部分が変化しているでしょうか。
 答えは発話者の人称が1人称単数の je から3人称単数の il に変わっていること(もちろん動詞の活用形も変わ
ります)、そしてそれに付随する発話者の所有物「ma petite sœur」が3人称単数の所有格を用いて「sa petite
sœur」に置き換わっていますね。
 この2つに気が付けばまずまず上出来ですが、ここまでだと100点満点は付与できません。もう一つ、間接話法に転
換させたことで変わった点があります。

 先ほどのギュメに関連する変化ですが、ギュメで引用されていた部分が que 節で表現されています。間接話法の文
では、この que 節を必ず用いなければなりません。そのために、上記のように dire などの基本的な動詞であれば
直接話法で示されていた叙述を間接話法に直すのに特に注意する必要はありませんが、主節の主語と que 節(従属節)
の主語が一致した場合に de + 不定詞 の形を取らなければいけないという制約のある動詞では、主節の主語と従属節
の主語が異なっていないと間接話法の文を作ることができないので注意が必要です。
例)ハンカチ拾ってもらったことを彼女が自慢する、という文を考えてみましょう。

 ●不定代名詞 on を用いて受動的に言う場合
Elle se flatte 《on a ramassé mon mouchoir.》
→Elle se flatte qu'on ait ramassé son mouchoir.○
 ☆主節の主語(elle)と従属節の主語(on)が異なっているので間接話法として成立します。

 ● se faire を用いて使役的に言う場合
Elle se flatte 《je me suis fait ramasser mon mouchoir.》
→Elle se flatte qu'elle se soit fait ramasser son mouchoir.×
 ☆主節の主語(elle)と従属節の主語(on)が同じなので文法間違いとなり、間接話法としても
  成り立ちません。この場合は Elle se flatte de s'être fait ramasser son mouchoir. のように
  de + 不定詞複合形 を用いて言い直す必要があります。
 本来主節の主語と従属節の主語が同じときには que 節を用いることはできないというのが原則ですが、口語の進展
により dire, penser, croire などの日常会話で頻繁に用いられる動詞についてはこの原則は無視されるようになっ
ています。

 この章では間接話法を中心に話を進めて行きたいので、これらの頻出語をメインに取り上げながら文法解説をしたい
と思います。


1. J'ai appris de mes parents que tous les autres m'étaient diables dans
l'enfance.

子供の頃、他人は皆自分に対して鬼なんだと親から教わった。
2. J'ai trompé aux utilisateurs que le vice en question était venu de la spécification.
例の欠陥は仕様によるものだとユーザーの方々には誤魔化しておいたよ。

◆間接話法における時制の一致

 いよいよ本題です。といっても本題の方が導入よりも簡単かもしれません^^;

 ギュメを用いた直接話法の文が que 節を用いた間接話法の文に書き換えられる際、主節が複合過去時制を取ると
que 節内の動詞もそれに合わせて時制が変化します。
 つまり、発話者の発言・思考などの内容が現在のものでなく過去のある一点において示されるものであるとき、こ
の間接話法における時制の一致の規則が適用されることになるのです。
 ひとまず下の表を見てください。
直接話法での引用符(ギュメ)内の動詞の時制 間接話法でのque節内の動詞の時制
現在半過去
複合過去大過去
近接未来(aller + 不定詞)・近接過去(venir + 不定詞)それぞれ aller, venir を半過去
単純未来条件法現在
半過去・条件法過去不変
 見ての通りですが、直接話法の文において引用符内に示されている動詞の時制が、間接話法の文に書き換えられたと
きにどのような時制を取るかをまとめたものです。
 これを冒頭で掲げた例文と照らし合わせて見てみましょう。

 1,の例文では、間接話法で叙述されることにより発話者(私)の思考の内容が示される従属節内の動詞が半過去形に
なっています。対訳からもわかるように、間接話法文で半過去形で示される動詞は、元の直接話法に置いては現在形で
あったと推測されます。このことを踏まえて、1.の例文を直接話法に戻してみると、

 J'ai appris de mes parents 《tous les autres te sont diables》 dans l'enfance.

 となります。主節の動詞が「〜ということを学ぶ」の意味になる「apprendre」なので、上の直接話法の文中のギュ
メで括られている引用部のうち、間接目的語 me も te (親から見て私なので2人称単数親和形)に変化していること
に注意してください。

 同様に2.の例文についても考えてみましょう。この例文では、従属節内の動詞が大過去形で示されているので、元の
直接話法の文においては同じ動詞は複合過去形であったと考えられます。先程のようにして2.の例文を直接話法を用い
た文に直して戻してみると、

 J'ai trompé aux utilisateurs 《le vice en question est venu de la spécification.》

 となりますね。複合過去の形で示された動詞が大過去の形に変わると考えてもよいのですが、複合過去形を構成する
一つの要素である助動詞 être, avoir が現在形から半過去形に化けると考えると最も基本的な「現在→半過去」の規
則と同様になるので少々理解しやすくなるかもしれません。


 D'autres expressions もっと例文!




◆直接話法ではセリフの部分が発話者の視点から見た状態で示されて、間接話法では発話者のセリフも含めた叙述全体が相手の視点から見た状態で示されるんだよ。だから、直接話法の文でギュメ(引用符)の中に所有格や直接目的語・間接目的語みたいな人称代名詞に絡む単語があるときは、間接話法の文に直したときに動詞の時制と一緒に変化させないといけないから注意してね。

◆間接話法での時制の一致については、主節の動詞が複合過去になったとき(つまり、発話者が過去に何か言ったり考えたりしたとき)に que 節以下の動詞がそれぞれ直接話法の文でどのような時制をとっていたかによって変化するっていうきまりしかないけど、主節の動詞が半過去形になるときは que 節以下の動詞が
être とか aimer みたいに状態を表すものである場合に限って合わせて半過去になるっていうきまりもあることを覚えておいてね。

Je pense qu'il est bête.Je pensais qu'il était bête.
(私は彼が馬鹿だと思う) (私は彼が馬鹿だと思っていた)
 
Je crois qu'elle m'aime.Je croiyais qu'elle m'aimait.
(私は彼女が私を愛していると信じる) (私は彼女が私を愛していると信じていた)

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